蕎麦っこめぐり

うまい蕎麦と日本酒を求めて、蕎麦屋をめぐる食いしん坊の日記

【信州・長野編】達磨一門の蕎麦を食べに「浅間翁(あさまおきな)」へ行く!

”信州・長野”といえば、美味しい蕎麦の産地。

寒暖差があり、涼しく湿気も少ないことから、良質で”美味しい蕎麦”がとれる。
また、蕎麦づくりにも適した環境で、全国的にも知られる蕎麦の有名店が多い地域だ。

今回は「達磨一門(だるまいちもん)」の一つである、長野県の『浅間翁(あさまおきな)』の話をしましょう。

達磨一門(だるまいちもん)」というのは、伝説のそば打ち職人「高橋邦弘氏」のもとで修業を積み、開業したお弟子さん達のことをいう。

また、師匠直伝の蕎麦を提供している”達磨一門”の店は「(おきな)」系と呼ばれている。

”浅間翁(あさまおきな)も師匠に認められたお弟子さんの店で、遠方から通うファンも多い。

■ 店内の雰囲気 ~ 「そば打ち部屋」が見える広いフロア!

「店内」と「そば打ち部屋」

店の入口には、”翁”と書かれた大きな看板が掲げられている。
”暖簾分け”は師匠からの卒業証書みたないものだ。
看板が嬉しそうに胸を張って、誇らしげだ。

暖簾をくぐると、店内は天井が高く、広々としており、テーブル席が4つ、こあがり(座敷)にテーブルが2卓あった。

店内のテーブル席からは、”そば打ち部屋”の様子が見えるようになっていた。
毎日、ここで自家製粉したそばを打っているのだ。その様子がうかがえる。

”そば打ち”の様子を見学してみたい♪

■ 蕎麦前 ~ 酒がすすむ「浅間翁」の蕎麦前たち!

今回、注文した”酒の肴”は全部で4品である。
どれも美味しそうだ。

  • わさびの茎付け
  • 焼きみそ
  • そばがき
  • 天ぷら盛り

〇わさびの茎付け

トップバッターは華やかな器で登場した。
蕎麦の返しに漬けられた「わさびの茎」に、薄く削られた”かつお節”がのっている。
食感は”シャキシャキ”として、わさびの”ツ~ン”とした味が食欲をそそる。

〇焼きみそ

”蕎麦の実””胡桃”が入っていて、”コリコリ”とした食感が楽しめて旨い。
信州の白みそは塩味は少なく、優しい甘さで私は好きだ。

”酒のアテ”には最高だ♪

〇そばがき

丁寧に練られた「そばがき」は、
口当たりは”なめらか”だが、”弾力”もある。”蕎麦の苦み””甘さ”のバランスがいい。
ほんの少し、塩や醤油をかけると、少し甘みが増す。

〇天ぷら盛り

となりで美味しそうに食べている夫妻を見て、思わず”追加注文”してしまった一品。

(海老、アスパラ、エリンギ、タラの芽、フキ)の”天ぷら5種盛り”だ。
この時期に採れる”山菜”を食べれるのは嬉しい♪

衣は”からり”と揚がっていて、食感は”サックサク”、アスパラは柔らかく、みずみずしい。山菜の”タラの芽””フキ”は苦みがあって旨い。

天つゆがついてくるが、塩で食べるのもオススメ!
ぜひ両方とも試してほしい。

■ 日本酒 ~ 「信州の地酒」に酔いしれる!

信州に来たなら”地酒”を愉しもう。
今回は、”変わったネーミング”に魅かれて、2つの銘柄を注文した。

「明鏡止水」と「和和和」

〇明鏡止水(めいきょうしすい)鬼辛純米

最初に注文したのは、長野県佐久市”大澤酒造”の日本酒である。

名鏡止水」という、武士のような”カッコいい”名前に惹かれて注文した。
鬼辛(おにから)」と書いてあるだけに、”苦み”がある”辛口”だ。
まさしく、キレ味のいい鬼辛!

〇和和和(わわわ)特別純米

2合目の酒は、同じ長野県佐久市の蔵元”古屋酒造店”の日本酒にした。

当日の地酒メニューを見て、この面白いネーミングに心を奪われた。
味も気になるけれど、名前の「意味」が知りたい。

酒が運ばれてくるのを”ワクワク”して待つ。

蔵元のホームページには、
(わ)の心で、和(やわ)らぎ、和(なご)んで欲しい」という、作り手の想いが込められて名付けられた酒と書いてあった。

さて、お味はどうかな?
”季節限定”の酒だけあって、フルーティーな香りと”やわらかな甘み””コク”が広がる。”ほどよい酸味”があり、キレ味もよかった。

蕎麦の美味しい土地には、うまい日本酒も多い。
”信州の地酒”に大満足した♪

■手打ち蕎麦 ~「達磨一門(だるまいちもん)」の手打ち蕎麦を堪能!

さあ、お目当ての”手打ち蕎麦”が登場だ!

伝説のそば打ち名人「高橋氏」の愛弟子さんが打った手打ち蕎麦。

遠方から食べにくる人も多いと聞く。
どんな”お味”か楽しみだ!

〇鴨ざる

私の好きな”鴨せいろ”は、店によって呼び名が違う場合がある。
浅間翁の品書きには”鴨ざる”と書いてあった。

この”鴨ざる”には驚いた!
器がデカく、鴨汁の量がすごい!!!

それもその筈、器の中には具(国産鴨肉鴨つくね九条ネギ)が”たっぷり”と入っていた。

”鴨肉”は厚みがあり、やわらかく、”鴨つくね”はホロリとした食感で美味しい。

ここで使う言葉ではないが、
まさに「鴨がネギを背負って、口の中にやってきた」という最高の気分だ♪

”鴨肉”の脂と”九条ネギ”の甘みが蕎麦つゆによく溶け込み、最高の味を醸しだしている。

”田舎そば””せいろ(二八そば)”のどちらかを選べる店もあるが、いろいろ試した結果、鴨汁には「二八そば」が一番相性がよいと思っている。

浅間翁では、”細打ちの二八そば”が出てきた。
鴨汁が細打ちの蕎麦によく絡み、格別の旨さ♪

あとで、残った鴨汁に「蕎麦湯」を割って飲むのが楽しみである。
絶対に美味しいはずだ!

〇田舎

今度は「田舎そば」をいただこう!
では、いつものように…

  • 1口目はそのままいただく
  • 2口目は塩を振りかけていただく
  • 3口目は蕎麦つゆにつけて「ズズッ~と」すする

自家製粉する際に、”蕎麦の甘皮”を一緒に挽き込む製法でつくられており、見た目が黒っぽく、甘皮の黒い”つぶつぶ”が見える。

”挽きぐるみ”ならではの、蕎麦の”色””香り””風味”が楽しめる。
噛めば噛むほど、蕎麦の”苦み””甘み”が口の中に全体に広がり、蕎麦の”香り”が鼻にぬけていく。

太めの”田舎そば”は、歯ごたえも抜群で蕎麦の味が濃い!

蕎麦つゆは、”辛口””少し濃いめ”である。
江戸っ子のように、蕎麦つゆに”たっぷり”つけて食べるタイプの味ではない。

好みによるが、
少量つけて食べるのがオススメの食べ方である。

■ 蕎麦湯 ~ 「翁」系の蕎麦湯はドロリと濃厚なタイプ!

やはり「翁」系の蕎麦湯は、
ドロリと白濁して濃厚なタイプである。

蕎麦湯と一緒に新しい「そば猪口」 も出してくれた。
お店の気配りが嬉しい♪

先に蕎麦湯だけを味わい、田舎の”蕎麦つゆ”と残った”鴨汁”に割って3度いただいた。
余すことなく飲み干してしまうほど、蕎麦湯も大満足だった!

■ まとめ

今回、お話した「浅間翁」さんは、私もまたリピートしたい店になった。
次回は、満腹でたどり着けなかった”甘味”は、ぜひ食べてみたい♪

全国には”達磨一門(だるまいちもん)として認められている「」系列の店舗は30店舗以上もあり、現在、この信州・長野には4店舗ある。

浅間翁」さんは、自信をもってオススメしたい店である。

美味しい蕎麦と地酒に舌鼓を打つこと間違いなし♪

次回の”蕎麦っこめぐり”は、
関東に9店舗ある「」系列の一つをお話しようと思っている。

〇おまけ

そばがきぜんざい」と「手作り羊羹(ようかん)」2品の甘味がある。
お腹に余裕がある方は、チャレンジしてほしい。
きっと美味しいはず♪

店舗情報

浅間 翁(あさま おきな)

長野県北佐久郡御代田町大字御代田3998-11
TEL 0267-41-0558
営業時間:11:00~14:00(最終受付)
定休日:月曜日

オリベに行こう!二宮の閑静な住宅街で「蕎麦前」を愉しむひととき

今回は、私のお気に入り”関東Best5”に入る蕎麦屋オリベ』さんの話をしましょう。

はじめてオリベを訪れた時に注文したのは「鴨せいろ」だった。
当時は”鴨せいろ”にハマっていて、行く先々の蕎麦屋で食べていた。

オリベの鴨せいろは食べた瞬間、
”鴨肉の柔らかさ””出汁の深み”にいたく感銘を受けた。

オリベの店主は「懐石料理や割烹系の経験者」に違いないと…感じた。

案の定、日本料理出身の店主であった!

若かりし頃は、茶懐石(茶事に出される懐石料理)で修業を積み、名店で腕を磨き、東京の麹町で割烹料理を営んでいたという。

そんな日本料理を極めた方が蕎麦職人に転向したのだ。

スタートの蕎麦前から楽しみだ♪

■ 店内の雰囲気 ~ 「これホンモノですか?」焼き物に目を奪われる!


まずは『オリベ』という店名が気になるだろう。
私も蕎麦屋にしては「めずらしい名前だなぁ」と気になったが、
暖簾をくぐって、すぐにわかった。

店に入ると、”織部焼があった。
私も大好きな焼き物だ。

店主は尊敬する茶人「古田織部(ふるたおりべ)」の名をとって店名にしたのだろう。

店内にはお茶席のような「茶花(ちゃばな)」と陶芸家の皿や花器が飾られている。
窓際には3体の動物たち(鳥やサイ)が鎮座している。

それがなんとも愛らしい~♪

■ 蕎麦前 ~ ゆっくり味わいたい懐石料理を思わせる一品!

まずは”お楽しみの蕎麦前”といこう♪
今回、酒の肴に選んだのは3品。

  • 蕎麦の実入りゴマ豆腐
  • そばみそ(焼き味噌)
  • 蕎麦ひろうす揚げ出し豆腐
「蕎麦の実入りゴマ豆腐」と「そばみそ」

〇蕎麦の実入りゴマ豆腐

胡麻どうふは”ねっとり”した滑らかさと”やさしい味”
それに”つぶつぶ”とした食感がする。
口の中で「僕ここにいるよ!」と主張してくるほど存在感がある。

〇そばみそ

さすが料理を引き立たせる織部焼
深緑の釉薬にそばみそ(焼き味噌)がよく映えている。

オリベの”そばみそ”は、
焼いた”味噌の香ばしさ”と蕎麦の実の食感と”やさしい甘み”がある。
酒とのマリアージュが格別だ♪

〇蕎麦ひろうす揚げ出し豆腐

オリベのメニューには「ひろうす」と書いてあるが、地域によって他に、”ひりょうず””ひりゅうす”と呼ばれている。

”ひろうす”は、豆腐をすり潰し、ニンジンや根野菜や胡麻を混ぜ、油で揚げたものだ。
簡単にいえば、”自家製がんもどき”のようなものである。

オリベの「ひろうす」は、表面は”カリッ”として、中は”ふんわり”して旨い。
蕎麦や野菜の食感が残る、なんとも”贅沢ながんもどき”である♪

■ 日本酒 ~ 夏酒はウマい!季節の酒は必ず頼むべし

”蕎麦前”のおかけで酒を飲むピッチが上がってしまった♪
今回、注文した酒はこの2銘柄。

春鹿(はるしか)」と「久礼(くれ)」

春鹿(はるしか)

最初に注文したのは、奈良県の日本酒「春鹿(はるしか)」である。
この酒は春日大社「春」神の使いである「鹿」から名付けられた、
”縁起の良いお酒”である。

春鹿」は穏やかな香りに、まろみと旨みがある。
”シャープ””キレのある辛口”の酒だ。冷でも燗でも両方いける。
食中酒にピッタリだ!
個人的に蕎麦屋に常備してほしい”安定のお酒”である。

〇久礼(くれ)

2合目に注文したのは、高知県の日本酒「久礼(くれ)」である。
高知県最古の造り酒屋「西岡酒造」のお酒だ。

西岡酒造はカツオがたくさん水揚げされる町で有名な土佐町久礼にある。
なんだか、刺身も食べたくなってしまう。

さて、お味の方はというと…
”メロンのような爽やかな香り”とみずみずしい旨味

さすが夏酒~♪

ガツンと力強さがあるが、
”爽快なキレ味”でスイスイと飲んでしまう”危険な酒”である。

■手打ち蕎麦 ~ 一茶庵系を匂わせる変わり蕎麦「柚子きり」の味!

さあ、メインの蕎麦をいただこう!

店内の壁には蕎麦の産地が紙に書いて貼ってある。
当日の蕎麦は「信州産」と書いてあった。

産地は時期により”北海道”や”秋田”、”群馬”などに変わる。
各地の”美味しい蕎麦”を楽しめるのは嬉しい♪

〇ハモと野菜の天せいろ

「ハモと野菜の天ぷら」と「せいろ(柚子きり)」

この時期、旬の魚「鱧(はも)」の天ぷらがあるではないか。

迷わず『ハモと野菜の天せいろ』にした♪

蕎麦は「せいろ」、「田舎」、「白雪」、「柚子きり」の4種類から1つ選べるという。

  • せいろ(二八そば)
  • 田舎(殻付きで挽いたそば)
  • 白雪(さらしなの別名)
  • 柚子きり(柚子の変わり蕎麦)

私は「柚子きり」を選んだ。
一茶庵本店で食べた”芥子きり蕎麦”を食べて以来、変わり蕎麦が好きになり、柚子きりを食べてみたくなった。

柚子を練り込んだ変わり蕎麦の上に、”柚子の皮”を削っている。
見た目もじつに美しい、まるで、”お化粧でもしている”みたいだ。

蕎麦をたぐり、口に含むと、”柚子の爽やかな香り”が口いっぱいに広がって鼻に抜け、食感は見た目の繊細さとは違い、弾力があって旨い。
けして香りだけではない!

続いて「ハモの天ぷら」はというと、衣は”サックっと”軽くて、中のハモは”ふんわり”と柔らかい。脂がのった身は、厚みがあって食べ応えがある。

産卵前のハモは栄養を蓄えて脂がのっている。夏が旬のハモであるだが、
じつは、”ハモの旬は2回”ある。冬眠前の晩秋(10月~11月)も栄養を蓄えて美味しいという。
そちらも食べてみたいものだ♪

〇三色せいろ

『三色せいろ』のラインナップは、
左から順番に「田舎」、「白雪」、「せいろ」である。

ここで気になるのは、真ん中の「白雪」だろう。
これは蕎麦屋の系列によって、”さらしな”の呼び名が違うからだ。

”雪のように白い”蕎麦。
一茶庵系の蕎麦屋では、”さらしな”を「白雪」と呼んでいる。

田舎」は、3つの中で一番、蕎麦の香りが強く、太めに切ってある。
つぶつぶ感は弱く、ザラつきもなく、なめらかな食感だ。

白雪」は、その名の通り見た目も清楚で美しく、細切りでありながら弾力もある。
食感はツルツルと一番滑らかだ。

せいろ」は、細切りの二八そば。
蕎麦の香りと苦みのバランスがよく、食感も滑らかである。

オリベの蕎麦つゆは、甘すぎず、すっきりとした辛口だ。
辛口といっても、しょっぱい訳ではなく、”鰹だしの味が濃い”のである。
鰹と昆布の旨みが凝縮している感じが舌に伝わってくる。

蕎麦つゆにつけて、”ズルズルッ~”とすするなら、この「せいろ」が一番合うと思った♪

■蕎麦湯 ~ 「極上の蕎麦つゆ」を心おきなくに堪能しよう!

蕎麦湯はサラリとしたタイプである。

いつもサラサラ系の蕎麦湯は酒のチェイサーとして飲むことが多いが、
”蕎麦つゆ”の味に魅せられてしまい、蕎麦湯を割って”じっくり味わいたい”と思った。

”極上の蕎麦つゆ”を余すことなく飲み干してきた♪

■まとめ

二宮の閑静な住宅街には、
日本料理を極めた蕎麦職人が営む素晴らしい店がある。
オリベ」という名前に負けないほど、”美味しい料理””蕎麦”を食べさせてくれる。

オリベは地元の常連客だけでなく、
遠方から通うファンがいるほど愛される蕎麦屋さんである。

私もそのひとりである♪

焼き物が好きな方は、ぜひ「オリベ」を訪ねてほしい。

〇おまけ

蕎麦屋にはめずらしい「鯛焼き」があって、私も一度、食べてみたいと思っている♪
事前に予約すると「蕎麦懐石」がいただける。

店舗情報

オリベ

神奈川県中郡二宮町百合が丘1丁目1-2

TEL 0463-73-3881

定休日 木曜日

営業時間 11:00~14:00 17:00~19:00
(蕎麦なくなり次第営業終了)

 

富士山の伏流水を使った「天祥庵(てんしょうあん)」の手打ち蕎麦!


今回は、毎年、夏になると食べたくなる蕎麦の話をしましょう♪
それは「天祥庵(てんしょうあん)」の辛味大根を使った”おろし蕎麦”

じつは、この天祥庵こそ、蕎麦っこめぐりの”第2弾”で紹介した一茶庵の創始者、友蕎子(ゆうきょうし)片倉康夫氏の愛弟子、天野さんが営んでいる蕎麦屋である。

天祥庵は富士山の麓、”忍野八海(おしのはっかい)”のすぐ近くに店を構えている。
忍野八海といえば、”名水100選”でも知られる人気の観光スポットだ。
富士山が世界文化遺産に登録されてからは、ますます有名になり、観光客も増えている。

忍野八海周辺は富士山の伏流水を使った蕎麦屋が数多く点在しており、天祥庵も敷地内に井戸を掘り、富士山の伏流水を汲み上げて美味しい蕎麦を打っている。

■ 店内の雰囲気 ~ 古民家を改装した森の中の蕎麦屋さん

「外観」と「入り口」

天祥庵の店構えは、茅葺き屋根の古民家”で、
青々と生い茂る緑の中に佇んでおり、じつに趣きのある建物だ。

富士山麓の木材を使って建てられており、
風になびく暖簾は、周りの木々の色に馴染み、穏やかな印象である。

ここをはじめて訪れる人は、
店に入る前から期待に胸をふくらませ、ワクワクするに違いない。
私もはじめて訪れた時は、そうであった♪

今では、毎年ここへ来ることが夏のイベントになっている。

■ 蕎麦前 ~ 「ぜひ食べてほしい!」縁起のいい富士山のかまぼこ

「赤富士蒲鉾と珍味揚げ」と「ぶっかけの薬味」

さて、蕎麦を食べる前に
定例になっている”蕎麦前”を愉しもうではないか♪

〇赤富士蒲鉾と珍味揚げ

お店のメニューにあれば、私は必ず「板わさ」を注文している。
天祥庵の板わさは、めずらしい富士山の蒲鉾(かまぼこ)だ。
それも縁起のいい赤富士である。

この蒲鉾(かまぼこ)は、まるで「金太郎アメ」のように、どこを切っても、
ず~っと”夕焼けの富士山”が続いている。

色鮮やかな見た目だけでなく、味も極上~♪

新鮮な魚(グチやイトヨリ)で作られていて、甘みがあってウマい。

続いて「珍味揚げ」のお味はというと、
表面を軽く炙っていて香ばしく、野菜の食感がシャキシャキと残っていて、
お醤油をつけずに食べても美味しい。

好みによるが、私はそのまま食べたいタチだ。
お醬油をつけない方が素材の味(魚と野菜の旨味)を堪能できる。
味を変えて、ワサビはちょっとつけてみた。

この2つをネットで調べたら、どちらも、小田原蒲鉾の老舗「籠淸(かごせい)」から、わざわざ取り寄せているようだ。これは旨いはずだ。

スタートから酒がすすむ~♪

 

〇ぶっかけの薬味

「ぶっかけ」蕎麦の薬味は酒のつまみにもなる。
皿にのっている”しゃもじ”は、天祥庵の「秘伝の焼き味噌」である。

辛過ぎず、まろやかな旨さで、
これがまた”酒のアテ”になって最高なのだ♪

薬味と一緒に少し残しておかねばならないが、
蕎麦がくる前に”焼き味噌”がなくなっても心配はいらない。

後から単品で追加注文できる!

■ 日本酒 ~ 初体験!手打ち蕎麦と「にごり酒」の相性はいいのか?

渓流どむろく(にごり酒

天祥庵の日本酒のラインナップは、
純米吟醸純米大吟醸、あつかん、にごり酒の4種類あって、私が選んだのは
長野県の遠藤酒造場の秘蔵酒のにごり酒「渓流どむろく」である!

にごり酒は甘酒のように、
結構、甘いのかなぁ?と想像してしまう。

が、しかし…

想像していたような”甘ったるい”感じはなく、
やや酸味のある甘さで「シュワシュワ~」っと、微発泡で爽やか!!

夏にピッタリのお酒であった♪
蕎麦との相性もよし。

 

■ 手打ち蕎麦 ~ 天祥庵の名物!「ぶっかけ蕎麦」と「辛味大根のおろし蕎麦」

「ぶっかけ」と「おろし」

にごり酒と蕎麦前を愉しんでいたところに、ようやく主役の登場である!
さあ、薬味たちの出番がまわってきた。

〇ぶっかけ(ぶっかけ蕎麦)

細打ちの二八そばの上に、
自家栽培薬味(ねぎとみょうが、大葉、なめこ、きくらげ、胡麻
しゃもじに塗られた焼き味噌を好みでのせて、
蕎麦つゆを”ぶっかけて”いただく。

で、あるが…

私は恒例となっている我流の食べ方をする。
豪快に”ぶっかける”のは、その後のお楽しみ!

  • 「1口目」は蕎麦を”そのまま”食べる
  • 「2口目」は”塩を一つまみ”振りかけて食べる
  • 「3口目」は”蕎麦つゆ”で食べる

 

一通り蕎麦をいただいた後は、
薬味をたっぷりとのせ、蕎麦つゆをぶっかけて食べる。
見た目も「贅沢なぶっかけ蕎麦」に早変わりする。
もちろん、味も絶品である♪

自家栽培の野菜を使った”こだわりの薬味””秘伝の焼き味噌”
蕎麦の味を引き立たせ最高の味になる。

さすが”人気のメニュー”である!

〇おろし(おろし蕎麦)

続いて、本日のお目当ての蕎麦!

”おろし蕎麦”に添えられている辛味大根の辛さは、
今まで食べ歩いた蕎麦屋の中でダントツ1位!

涙が出るほど、超辛~い!!

もう何年も通っているが、、、いまだに
この辛さを超える蕎麦屋さんに巡り会ったことがない。

辛味大根おろしの辛さは”天祥庵がナンバーワン”である!

蕎麦には”辛味大根おろしと一緒にたっぷりの”なめこがのせられている。
これまた、コリコリと弾力あり、つるんとした食感で
近所の食品スーパーで売っている”なめこ”と違い、味が濃くて美味しい!

自家栽培のなめこ”ねぎ”を混ぜ合わせて
”辛味大根おろしの量を調節しながら、蕎麦つゆをかけて食べる。

なみだ目になりながら味わうのも一興。

窓越しに緑を眺め、ピリリと辛い蕎麦をすすり、
目と舌で夏を満喫する♪…(体感している)

■ 蕎麦湯 ~ 一茶庵本店と似ているサラサラ蕎麦湯

今回は写真を撮り損ねてしまったが、
天祥庵も一茶庵本店の蕎麦湯に似ていて、
少し白濁としているがサラリとしたタイプである。

この日も酒のチェイサーとして蕎麦湯をいただいた。
次回は”残った焼き味噌”を蕎麦湯に溶いて飲んでみようと思っている。

来年の夏、もう一つ楽しみが増えた♪

■ まとめ

細打ちの二八そば

天祥庵の手打ち蕎麦は、一茶庵本店の二八そばより、少し太く感じたが
まぎれもなく、一茶庵から受け継がれた味だった。

1代目店主『天野正美さん(片倉氏の愛弟子)』
栃木県足利市の一茶庵本店で修業に励んだ後に天祥庵を開業し、開業後も休みの日を使って栃木県まで習いに行きながら、腕を磨いたという。
ご子息の2代目店主『天野洋介さん』も同じように、一茶庵本店へ修業に行っている。

一茶庵の「蕎麦打ちの技術」と「蕎麦へのこだわり」は、
父から子へ、子から孫へ、脈々と受け継がれているのが感じられる。

また、天祥庵の”地産地消のこだわりは、地元の活性化に貢献しているに違いない。

  • 富士山麓の木材で建てられた茅葺き屋根の古民家”
  • 自家栽培した”こだわりの薬味”
  • ”富士山の伏流水”で打った蕎麦


富士山の麓という最高のロケーションで”こだわりの手打ち蕎麦”
を味わってほしい♪

〇おまけ

店内には”ちょっとしたお土産”も用意されている。
季節によって、その時期にとれた果物や野菜が販売されている。
ちなみに、私が行った時は「桃」が売っていた。

お蕎麦を食べた後、
帰り際にお土産をのぞいてみてはどうか。
旬のものが手に入るかもしれない。

店舗情報

手打ちそば 天祥庵

山梨県南都留郡忍野村忍草2848-2
TEL 0555-84-4119
第3水曜日(臨時休業あり)
11:00~16:00 
※売り切れ次第終了
※8月は無休で営業

変わり蕎麦といえば「一茶庵のけしきり蕎麦」人気の五色そばを食べてみた!

五色そば

手打ち蕎麦といえば、「更科(さらしな)」系、「(やぶ)」系、「砂場(すなば)」系、「一茶庵(いっさあん)」系、この”4つ”が有名どころ。
今では、さらに派生して独自の蕎麦を考案している店舗が増えている。

今回、お話しするのは栃木県足利市に店を構える『一茶庵(いっさあん)本店』である。

蕎麦打ちの名士達の間で、(その名を知らぬ者はいない)と言われる、一茶庵の創始者「友蕎子(ゆうきょうし)片倉康夫氏」の店だ。

現在、片倉氏を支持して、足利の店で修業したお弟子さん達が巣立ち、彼の”蕎麦打ちの技術”と””を伝承しながら全国で活躍している。

片倉氏は、お弟子さん達にとって「お蕎麦の世界の千利休」のような人物だったに違いない。

このブログ”蕎麦っこめぐり”では、片倉氏の愛弟子である”高橋邦弘氏”が新たに開いた「(おきな)」系の名店を紹介していくことになるでしょう。

それゆえ、その元祖となる「一茶庵(いっさあん)本店」を先に語らずして、先へ進めないのである。

では今回、お目当ての人気メニュー変わり蕎麦「けしきり蕎麦」を堪能してみよう!

■ 店内の雰囲気 ~ 一茶庵の創始者、片倉康雄氏の記念室「友蕎亭」が見える!

「中庭」と「友蕎亭」

一茶庵本店の店内は、天井が高くて、広々としており、席数もかなり多い。
店内のテーブル席からは、風情ある中庭を眺めることができる。

都内に店を構える蕎麦屋とは違い、敷地も広く、贅沢な造りになっている。
テーブル席に案内されたので見えなかったが、奥にはお座敷もある。

さすが本店だけあって、蕎麦屋というより、料亭を思わせる雰囲気である。

窓際から中庭を眺めると「友蕎亭(ゆうきょうていてい)」という看板を掲げた部屋(離れ座敷)が目に飛び込んできた。

この部屋は一茶庵の創始者、片倉康雄氏の記念室で、彼が愛用した道具や書籍が展示されており、予約すれば見学できるようである。

 

■ 蕎麦前 ~ この鴨スモークを食べずして帰れるものか!

「板わさ」と「鴨スモーク」

〇 板わさ

まず、日本酒と一緒に出てきたのが「板わさ」、小田原産のかまぼこである。
シンプルにうまい。厚みもちょうどいい。
醤油をつけずにワサビだけで十分である。

〇 鴨スモーク

続いて、”合鴨肉のくんせいが登場。
優しいピンク色で食欲をそそる。レタスのグリーンにレモンの黄色、色鮮やか!

手前の輪切りレモンが「早く搾れ!」と言わんばかりに主張している…ように見える。

1枚目は何もつけずにそのまま食べる。
燻製した合鴨肉はハムのように、”やわらかく”、旨い。

2枚目は味を変えて、レモンを搾った肉を食べてみる。
レモンの酸味で味が引き締まり、これもまた旨い!
さらに味を変え、板わさに添えられていたワサビもつけてみる。
もちろん旨い。

■ 日本酒 ~ 「赤城山」これは隣県の銘酒では?

赤城山

蕎麦前と一緒に頼んだ酒は、
お隣り群馬県の日本酒赤城山(あかぎさん)本醸造辛口 生貯蔵酒」である。

ラベルには赤字で「男の酒」と書いてある。

カッコいいではないか!

味は、”キリリ”と辛口で、のど越しがスッキリとしたドライなタイプ。
私の好きな味である。

女性的な優しさの合鴨肉のくんせいには…
男の酒」がピッタリだ!
お通しで出された山菜とも相性抜群。

■ 手打ち蕎麦 ~ 変わり蕎麦といえば、一茶庵の「けしきり蕎麦」が有名!

 

〇 五色そば(数量限定)

”変わり蕎麦”を味わうなら、一茶庵の「五色そばをぜひ試してほしい。
蕎麦が入っている器は、それぞれ5色に塗り分けられてあり、じつに趣きがある。

蓋を開ける前から期待が膨らみ、心が躍る♪

さあ、蕎麦たちのお顔を拝見しようじゃないか。
蓋を開けて並べてみると、豪華絢爛だ!!
蕎麦が5種類も並ぶと、目にも鮮やかで美しい。

【五色そばの中身】

  1. 左上(赤の器) → 「おせいろ」
  2. 右上(茶の器) → 「田舎そば」
  3. 右下(青の器) → 「けしきり」
  4. 中下(黒の器) → 「茶そば」
  5. 左下(黄の器) → 「さらしな」

おせいろ」は、蕎麦粉8割に対して、小麦粉2割で打ち込んだ極細の二八そば。
表面にホシと呼ばれる(甘皮やそば殻の微粉)粒々はなかったが、蕎麦の風味はしっかり残っていた。

田舎そば」は、蕎麦を殻つきのまま挽いて、蕎麦の色は少し黒め。おせいろより、少し色が濃い。中細でなめらか、食感は”モチモチ”していた。

けしきり」は、さらしな粉に炒った”芥子の実”を打ち込んだ変わり蕎麦である。
蕎麦の表面に芥子の実の粒々があり、炒った香ばしさと蕎麦の甘みが感じられる。
さすが人気の変わり蕎麦!これが食べたかった。

茶そば」は、さらしな粉に抹茶を打ち込んだ変わり蕎麦である。抹茶の緑色が鮮やかで目も楽しませてくれる。茶ばの香りが口から鼻に抜けて、上品で味わい深い。

さらしな」は、5つの中で一番、真っ白な蕎麦である。粗挽き蕎麦が好きな私には、お上品な「さらしな」さんは物足りなかった。

5つのうち、”変わり蕎麦”は「けしきり」と「茶そば」で季節によっては「柚子切り」が登場する。

変わり蕎麦を考案した御本家は、
器にもこだわりがあり、目と舌の両方を愉しませてくれる。素晴らしい!

ちなみにメニューには、”三色そば”もある。
「けしきり」、「茶そば」、「田舎そば」が入っていて、変わり蕎麦は2つ楽しめる。

〇 天せいろ

 

天婦羅つきのせいろである。
五色そばの「おせいろ」と同じ極細の二八そばであるが、量が多く、食べ応えあり!

天婦羅は”海老2尾”と”茄子”、”人参”、”カボチャ”、”ピーマン”が盛られていた。
味は普通においしいが、私は衣が薄く、からりと揚がっている方が好みだ。

蕎麦つゆは、甘辛く、かつお出汁が効いた濃いめな感じだった。

1口目は、箸でたぐって、そのまま食べる。
2口目は、お塩をもらって、蕎麦に振りかけて食べる。
3口目は、蕎麦つゆにつけて、”ズズズッーっ”とすする。

この後は薬味を加えて、酒を飲みながら蕎麦をいただく。
毎回、この食べ方をする。

■ 蕎麦湯 ~ さらさら系の蕎麦湯はお酒のチェイサーに!

蕎麦湯

一茶庵本店の蕎麦湯は、少し白濁していて、”さらさら”した感じである。
少しトロミがかっていたが、お酒のチェイサーとしていただいた。

 

■ まとめ

一茶庵本店

私がはじめて一茶庵の手打ち蕎麦を食べた店は、同じ系列の「鎌倉一茶庵」である。
当時は鎌倉の鶴岡八幡宮の目の前に店を構えていた。残念ながら現在は閉店している。

今でも、鎌倉一茶庵で食べた「きのこの鴨せいろ」の味が忘れられない。

厚みのある鴨肉はとても柔らかく、たくさんの茸が入った鴨汁の味は格別の味だった。
せいろとの相性もよく、蕎麦をいただいた後の鴨汁は蕎麦湯を注ぎ足し、全部飲み干してしまうほど、素晴らしい蕎麦であった。

私が蕎麦を好きになったのは、鎌倉一茶庵の蕎麦を食べた後からだと思っている。
そして今では、一茶庵の流れを組む「」系の蕎麦屋をめぐるのを目下の楽しみとしている。 

そんな自分が好きになった蕎麦の元祖である「一茶庵本店」には、必ず来てみたいと思っていた。
本家本元は店構えも格式があり、まるで料亭のようなお蕎麦屋だった。

次回、”蕎麦っこめぐり”第三弾は、一茶庵の創始者、片倉康夫氏の下で直接、修業をした愛弟子さんの店を紹介しようと思う。

店舗情報

一茶庵本店


栃木県足利市柳原町862-11
TEL 0284-40-3188
営業時間:午前11時30分~午後2時(売れ切れ次第終了)
定休日:毎週水曜日(月一回 火・水または水・木連休の週あり)
※他に催事などで臨時休業あり

並んでも食べたい柴又の「そば㐂り 日曜庵(そばきり にちようあん)」の絶品玉子焼き!!

東京の葛飾区柴又に週末の金・土・日・祝日だけ営業している店がある。

今回、お話するのは、その名も日曜庵(にちようあん)

この店は映画「男はつらいよ」フーテンの寅さんの舞台となった柴又帝釈天に程近い、閑静な住宅街に佇んでいる。

店には開店時間(11時)の5分前に到着したのだが、すでに10人以上は並んでいる。

はたして、第一陣で店内に入れるだろうか?

ドキドキしながら、しばし開店を待つ…。

開店時間になると、中から白髪のおじ様(店主?)が現れ、行列の先頭から、1組ずつ店内に案内している。

私の順番は7組目!
さて、こちらまで呼びに来てくれるだろうか…(後ろで様子をうかがう)
ついに、6組目まで呼ばれた!! 固唾を吞んで待つこと数分…。

白髪のおじ様が近づいてきた…「どうぞ中へ」と、お声がかかった!!
やったー!(嬉々とする ♪)滑り込み成功。

いざ、店内へ。

■ 店内の雰囲気 ~ アトリエのような日曜庵!

店内に入ると吹き抜けの高い天井、解放感がある。広い!
テーブル席が6卓あり、2人掛けの席に案内された。

ぐるりと見渡すと、暖かいオレンジ色の照明と天窓から差し込む柔らかな日差しが、あいまって、なんとも心地よい空間である。

私は案内された席に落ち着き、メニューと蕎麦茶が出てくるのを待った。

■ 蕎麦前 ~ 盛り付けも芸術的な日曜庵!

まずは蕎麦を食べる前に日本酒と料理をいただこう♪
酒の肴に選んだのは4品。

  • 板わさ
  • 焼き味噌
  • 鴨焼き
  • 玉子焼き
「板わさ」と「焼き味噌」

〇 板わさ

なんと! 板わさには、鱧(はも)が入っていた。
何もつけず、そのまま食べてもうまい!
ワサビをつけて味を変てみる。

 

手前に添えられているのは、茎わさび。
板わさに茎わさびをのせて食べてもいい。
しゃくしゃくとした歯ごたえ、茎もピリリと辛味があって最高だ。

〇 焼きみそ

板わさとほぼ同時に出てきた焼き味噌は
こんもりと「お灸」みたいな形をしている。
つぶつぶと蕎麦の実がたっぷり入っている。

表面を炙った焼き味噌の香ばしい味、その食感は格別である。
添えてある人参にのせて食べると、これまた旨い!
カリカリと食感もいい。

この噛み応えが「今日は野菜を食べた!」という気分にさせる。(妙な安心感)

 

「鴨焼き」と「玉子焼き」

〇 鴨焼き

続いて、ジュージュー♪と威勢のいい音を立てて登場したのが「鴨焼き」である。
まさか鉄板に入って現れるとは思っていなかった。

ぐいっと、テンションが上がる!

見るからに厚みのある肉。
口に入れる前から柔らかいと感じている。
もうワクワク感が止まらない♪

猫舌の私、、、粗熱が引くまで待つこと4~5分。
本来ならアツアツを食べたほうが美味しいに決まっている。
が、しかし、いつも舌をやけどするので、ここはガマン!

頃合いをみて、その一枚を口に入れる。
うわ~すごい。噛むごとに鴨肉の肉汁が口の中いっぱいに広がる…。
至福のときである。

〇 玉子焼き

私はあなたを待っていましたよ~。
三つ葉をあしらった、目にも鮮やかな「玉子焼き」がついに登場!
出汁巻き玉子といえば、お蕎麦屋さんの定番メニューの一つである。
通常は焼き色がついているものが多いが、
こんな焦げ目のない美しい玉子焼きを見たことがあるだろうか。

もう、、、うっとりする。

その口当たりは、ほろりと柔らか~く、タマゴの甘さがほんのりと感じられた。
口に入れると玉子からお出汁がジワジワとしみ出てくる。
やさしさが口いっぱ~いに広がる。
滋味(じみ)あふれる味。ほっこりする。

 

ここ日曜庵では熟成蕎麦に次いで、大人気なのが
この「玉子焼き」である!
蕎麦と一緒に玉子焼きを目当てにやってくる人が多いのも頷ける。
そう、私もそのひとりである。

■ 日本酒 ~ 片口(かたくち)もセンス抜群な日曜庵!

次に料理と一緒に頼んだ酒の話をしよう。
私は蕎麦屋で飲む酒は「日本酒」と決めている。
単に大好きなだけであるが、「蕎麦焼酎」は一度試してみたいと思っている。
チャレンジしたら、日記に書こうと思う。

 

「楽器正宗」と「今西」

〇 楽器正宗(がっきまさむね)

はじめに頼んだのは福島県の日本酒「楽器正宗(がっきまさむね)  本醸造  中取り」。
正宗さん(酒)は、白い陶器に赤いツバキが描かれている、大きな片口に注がれてきた。
その艶やかさに心が華やぐ。

 

楽器正宗のラベルは、黄色い背景に着物姿の女性がよこ笛を奏でている。
正宗という男性の名前でありながら、ラベルには女性が描かれているのだ。
それをわかって、花の片口に注ぐとは、なんと粋な計らいであろう。 
これまた、テンションが上がる!

 

お味は桃のような上品な香り、甘みと酸味のバランスがよく、後味はスッキリしている。
うっすら、バナナのような甘い酸味も感じられた。

ちりめん山椒

お通しは「ちりめん山椒」。(酒と一緒に出てくる)
信楽焼黒い小箱に入っている。もうこれだけで酒が飲める。

〇 今西(いまにし)

2合目の酒は、奈良県の「今西(いまにし)  純米吟醸  朝日」。
こちらは、黒塗りの楽茶碗のような片口に注がれてきた。じつに渋い。
今西は、洋梨のような香りがして、楽器正宗より辛口でありながら、米の旨みをしっかり感じる。
コクがあって、余韻が残る感じがいい。そして、お腹にじわ~っと効く。
う~ん ウマイ。

■ 手打ち蕎麦 ~ 「熟成蕎麦」はここでしか食べれない日曜庵!

蕎麦前をたっぷり堪能し、いよいよ主役の登場である!!
日曜庵は「熟成蕎麦」を使った手打ちそばが食べれる珍しいお店だ。
新そばを3年間、専用貯蔵庫で寝かせたものを使っている。
蕎麦を「低温真空遮光保存」しているのだ。

 

語弊があるかもしれないが、3年間、蕎麦を「冬眠」させているようなものだと思う。
寝る子はよく育つ。そして蕎麦の味もよく育つ。
熟成された蕎麦のタンパク質がうまみ成分のアミノ酸に変化し、より美味しくなるのだ。

〇 丸挽き蕎麦

丸抜き蕎麦

まずは、定番のシンプルな熟成蕎麦「丸抜き蕎麦」をツルっといただく。

蕎麦の風味をダイレクトに味わうため、
1口目は箸で蕎麦をたぐりよせ、そのまま口に運ぶ
ふわっと苦みのある香り、粒々した感触、噛むと苦みの後に蕎麦の甘みを感じる。

2口目は別添えの塩を蕎麦に一つまみ、はらりと振りかけていただく。
塩味が効いて、蕎麦の甘みがより増してくる。
小豆を炊いて餡子(あんこ)をつくる際に、ほんの少し塩を足すと甘みが増す。
それと似ている。

ここで、日本酒をグイっと、ひと口。
うまーーーい! どんどん酒がすすむ。

3口目は蕎麦をつゆでいただく。たぐった蕎麦をつゆに半部くらいつけ、
ズズズッーっとすする。
蕎麦はつゆに全部つけない! ちょこっと少しだけつける。
つゆの味で蕎麦の風味がかき消されてしまわないように
蕎麦つゆに全部つけずに、ちょっとつけて食べるのが私流

蕎麦の食べ方は、人それぞれ、自分の好みで良いと思う。好きに愉しめばいい。

〇 粗挽き蕎麦

粗挽き蕎麦

もう一つ頼んだのは、粗挽き蕎麦。「水蕎麦」が添えられている。
蒸篭(木箱)の手前に涼やかな子が「早く食べてみて~♪」と、言わんばかりに見上げている。

蕎麦を水につけて食べるという斬新な発想、、、素晴らしい!
水につけて食べるのも蕎麦の味そのものが、しっかりと感じられる。
むしろ、夏はこれがイイ! 
水の中で泳ぐ蕎麦を愛でながら食べようではないか。すぐ食べちゃうけれど…。

蒸篭(木箱)の蓋を開けると、看板メニューの熟成蕎麦(粗挽きタイプ)が登場! 薄っすら緑がかった蕎麦の表面に白い粒々がちりばめられている。
これは玄蕎麦を石臼で自家製粉する際、甘皮をたっぷり挽き込んでいるからである。

蕎麦をたぐり、口に運ぶと、ふわりと香ばしさが鼻に抜け、蕎麦特有の青みがかった苦みを感じる。その後に穀物の甘みが押し寄せてくる。
丸挽き蕎麦よりコシがあり、もちもちとした食感。甘みと旨みが口いっぱいに広がっていく。

蕎麦を熟成させると、こんなにも旨みが増すのか!!と感動する。
もう酒がすすんで仕方がない、、、ウマイが止まらない!
腹の中で小躍りしている ♪

■ 蕎麦湯 ~ 濃厚なタイプを味わいたいなら日曜庵!

蕎麦湯

頃合いを見て、蕎麦湯が運ばれてきた。
白濁とした濃厚な色、まるで豆乳のようである。いや、甘酒かな?
木製の細長いスプーンが添えられている。いわゆるマドラーですな。
よ~く混ぜ混ぜしながら、そば猪口に注ぎ、先ずはそのままを飲む。
(猫舌ゆえに、、少し粗熱を冷してから)

見た目は豆乳や甘酒に見えるが、口にすると、蕎麦のポタージュか?と言いたくなるほど、とろ~りとして濃厚な味わい。つぶつぶ感もある。

つゆに薄めて飲むと、つゆの出汁とマリアージュして、別の飲み物になる。
蕎麦湯の御代わりをしている客もいた。

私は蕎麦湯と一緒に酒を飲むことがある。
蕎麦つゆに好みの加減で蕎麦湯と薬味をブレンドして、味を調整しつつ、酒と交互に飲む。

 

私の場合は、
濃厚なタイプの蕎麦湯 → 酒のつまみ
さらさらタイプの蕎麦湯 → 酒のチェイサー にしている。

蕎麦屋で酒を愉しむ飲むときは、ぜひ試してもらいたい。

■ まとめ

 

日曜庵では、直接、農家に赴き、厳選した玄蕎麦(殻がついたままの蕎麦の実)を仕入れ、専用の冷蔵倉庫で大切に3年間寝かせ、熟成させている。

 

3年間、寝かせる事で味が追熟され、穀物の甘みと旨味が増していく。
冬眠から目覚めた美味しい蕎麦、ぜひとも一度味わってほしい。

 

そして忘れてはならないのが、あの「絶品玉子焼き」である。
並んでも食べてほしい、あの味と美しさに感動してもらいたい!

さて、ここまで長らくお付き合いいただいた方...
あなたも「蕎麦好きの呑兵衛さん」ですね。

蕎麦を食べ歩いて、写真を撮り貯めていたところに
今回、ブログを書くという機会ができてたので、
満を持して「手打ち蕎麦」をテーマに日記を書くことにした。

蕎麦っこめぐり、第一弾は「日曜庵」を紹介しましたが、次回は私の好きな蕎麦屋系列の元祖である店を紹介しようと思う。

店舗情報

そば㐂り 日曜庵

東京都葛飾区柴又7-13-2
TEL 03-5668-0084
金・日・土・祝日が営業
11:00 ~(蕎麦なくなり次第営業終了)
アクセス:京成金町線 「柴又」 駅より徒歩約5分