蕎麦っこめぐり

うまい蕎麦と日本酒を求めて、蕎麦屋をめぐる食いしん坊の日記

並んでも食べたい柴又の「そば㐂り 日曜庵(そばきり にちようあん)」の絶品玉子焼き!!

東京の葛飾区柴又に週末の金・土・日・祝日だけ営業している店がある。

今回、お話するのは、その名も日曜庵(にちようあん)

この店は映画「男はつらいよ」フーテンの寅さんの舞台となった柴又帝釈天に程近い、閑静な住宅街に佇んでいる。

店には開店時間(11時)の5分前に到着したのだが、すでに10人以上は並んでいる。

はたして、第一陣で店内に入れるだろうか?

ドキドキしながら、しばし開店を待つ…。

開店時間になると、中から白髪のおじ様(店主?)が現れ、行列の先頭から、1組ずつ店内に案内している。

私の順番は7組目!
さて、こちらまで呼びに来てくれるだろうか…(後ろで様子をうかがう)
ついに、6組目まで呼ばれた!! 固唾を吞んで待つこと数分…。

白髪のおじ様が近づいてきた…「どうぞ中へ」と、お声がかかった!!
やったー!(嬉々とする ♪)滑り込み成功。

いざ、店内へ。

■ 店内の雰囲気 ~ アトリエのような日曜庵!

店内に入ると吹き抜けの高い天井、解放感がある。広い!
テーブル席が6卓あり、2人掛けの席に案内された。

ぐるりと見渡すと、暖かいオレンジ色の照明と天窓から差し込む柔らかな日差しが、あいまって、なんとも心地よい空間である。

私は案内された席に落ち着き、メニューと蕎麦茶が出てくるのを待った。

■ 蕎麦前 ~ 盛り付けも芸術的な日曜庵!

まずは蕎麦を食べる前に日本酒と料理をいただこう♪
酒の肴に選んだのは4品。

  • 板わさ
  • 焼き味噌
  • 鴨焼き
  • 玉子焼き
「板わさ」と「焼き味噌」

〇 板わさ

なんと! 板わさには、鱧(はも)が入っていた。
何もつけず、そのまま食べてもうまい!
ワサビをつけて味を変てみる。

 

手前に添えられているのは、茎わさび。
板わさに茎わさびをのせて食べてもいい。
しゃくしゃくとした歯ごたえ、茎もピリリと辛味があって最高だ。

〇 焼きみそ

板わさとほぼ同時に出てきた焼き味噌は
こんもりと「お灸」みたいな形をしている。
つぶつぶと蕎麦の実がたっぷり入っている。

表面を炙った焼き味噌の香ばしい味、その食感は格別である。
添えてある人参にのせて食べると、これまた旨い!
カリカリと食感もいい。

この噛み応えが「今日は野菜を食べた!」という気分にさせる。(妙な安心感)

 

「鴨焼き」と「玉子焼き」

〇 鴨焼き

続いて、ジュージュー♪と威勢のいい音を立てて登場したのが「鴨焼き」である。
まさか鉄板に入って現れるとは思っていなかった。

ぐいっと、テンションが上がる!

見るからに厚みのある肉。
口に入れる前から柔らかいと感じている。
もうワクワク感が止まらない♪

猫舌の私、、、粗熱が引くまで待つこと4~5分。
本来ならアツアツを食べたほうが美味しいに決まっている。
が、しかし、いつも舌をやけどするので、ここはガマン!

頃合いをみて、その一枚を口に入れる。
うわ~すごい。噛むごとに鴨肉の肉汁が口の中いっぱいに広がる…。
至福のときである。

〇 玉子焼き

私はあなたを待っていましたよ~。
三つ葉をあしらった、目にも鮮やかな「玉子焼き」がついに登場!
出汁巻き玉子といえば、お蕎麦屋さんの定番メニューの一つである。
通常は焼き色がついているものが多いが、
こんな焦げ目のない美しい玉子焼きを見たことがあるだろうか。

もう、、、うっとりする。

その口当たりは、ほろりと柔らか~く、タマゴの甘さがほんのりと感じられた。
口に入れると玉子からお出汁がジワジワとしみ出てくる。
やさしさが口いっぱ~いに広がる。
滋味(じみ)あふれる味。ほっこりする。

 

ここ日曜庵では熟成蕎麦に次いで、大人気なのが
この「玉子焼き」である!
蕎麦と一緒に玉子焼きを目当てにやってくる人が多いのも頷ける。
そう、私もそのひとりである。

■ 日本酒 ~ 片口(かたくち)もセンス抜群な日曜庵!

次に料理と一緒に頼んだ酒の話をしよう。
私は蕎麦屋で飲む酒は「日本酒」と決めている。
単に大好きなだけであるが、「蕎麦焼酎」は一度試してみたいと思っている。
チャレンジしたら、日記に書こうと思う。

 

「楽器正宗」と「今西」

〇 楽器正宗(がっきまさむね)

はじめに頼んだのは福島県の日本酒「楽器正宗(がっきまさむね)  本醸造  中取り」。
正宗さん(酒)は、白い陶器に赤いツバキが描かれている、大きな片口に注がれてきた。
その艶やかさに心が華やぐ。

 

楽器正宗のラベルは、黄色い背景に着物姿の女性がよこ笛を奏でている。
正宗という男性の名前でありながら、ラベルには女性が描かれているのだ。
それをわかって、花の片口に注ぐとは、なんと粋な計らいであろう。 
これまた、テンションが上がる!

 

お味は桃のような上品な香り、甘みと酸味のバランスがよく、後味はスッキリしている。
うっすら、バナナのような甘い酸味も感じられた。

ちりめん山椒

お通しは「ちりめん山椒」。(酒と一緒に出てくる)
信楽焼黒い小箱に入っている。もうこれだけで酒が飲める。

〇 今西(いまにし)

2合目の酒は、奈良県の「今西(いまにし)  純米吟醸  朝日」。
こちらは、黒塗りの楽茶碗のような片口に注がれてきた。じつに渋い。
今西は、洋梨のような香りがして、楽器正宗より辛口でありながら、米の旨みをしっかり感じる。
コクがあって、余韻が残る感じがいい。そして、お腹にじわ~っと効く。
う~ん ウマイ。

■ 手打ち蕎麦 ~ 「熟成蕎麦」はここでしか食べれない日曜庵!

蕎麦前をたっぷり堪能し、いよいよ主役の登場である!!
日曜庵は「熟成蕎麦」を使った手打ちそばが食べれる珍しいお店だ。
新そばを3年間、専用貯蔵庫で寝かせたものを使っている。
蕎麦を「低温真空遮光保存」しているのだ。

 

語弊があるかもしれないが、3年間、蕎麦を「冬眠」させているようなものだと思う。
寝る子はよく育つ。そして蕎麦の味もよく育つ。
熟成された蕎麦のタンパク質がうまみ成分のアミノ酸に変化し、より美味しくなるのだ。

〇 丸挽き蕎麦

丸抜き蕎麦

まずは、定番のシンプルな熟成蕎麦「丸抜き蕎麦」をツルっといただく。

蕎麦の風味をダイレクトに味わうため、
1口目は箸で蕎麦をたぐりよせ、そのまま口に運ぶ
ふわっと苦みのある香り、粒々した感触、噛むと苦みの後に蕎麦の甘みを感じる。

2口目は別添えの塩を蕎麦に一つまみ、はらりと振りかけていただく。
塩味が効いて、蕎麦の甘みがより増してくる。
小豆を炊いて餡子(あんこ)をつくる際に、ほんの少し塩を足すと甘みが増す。
それと似ている。

ここで、日本酒をグイっと、ひと口。
うまーーーい! どんどん酒がすすむ。

3口目は蕎麦をつゆでいただく。たぐった蕎麦をつゆに半部くらいつけ、
ズズズッーっとすする。
蕎麦はつゆに全部つけない! ちょこっと少しだけつける。
つゆの味で蕎麦の風味がかき消されてしまわないように
蕎麦つゆに全部つけずに、ちょっとつけて食べるのが私流

蕎麦の食べ方は、人それぞれ、自分の好みで良いと思う。好きに愉しめばいい。

〇 粗挽き蕎麦

粗挽き蕎麦

もう一つ頼んだのは、粗挽き蕎麦。「水蕎麦」が添えられている。
蒸篭(木箱)の手前に涼やかな子が「早く食べてみて~♪」と、言わんばかりに見上げている。

蕎麦を水につけて食べるという斬新な発想、、、素晴らしい!
水につけて食べるのも蕎麦の味そのものが、しっかりと感じられる。
むしろ、夏はこれがイイ! 
水の中で泳ぐ蕎麦を愛でながら食べようではないか。すぐ食べちゃうけれど…。

蒸篭(木箱)の蓋を開けると、看板メニューの熟成蕎麦(粗挽きタイプ)が登場! 薄っすら緑がかった蕎麦の表面に白い粒々がちりばめられている。
これは玄蕎麦を石臼で自家製粉する際、甘皮をたっぷり挽き込んでいるからである。

蕎麦をたぐり、口に運ぶと、ふわりと香ばしさが鼻に抜け、蕎麦特有の青みがかった苦みを感じる。その後に穀物の甘みが押し寄せてくる。
丸挽き蕎麦よりコシがあり、もちもちとした食感。甘みと旨みが口いっぱいに広がっていく。

蕎麦を熟成させると、こんなにも旨みが増すのか!!と感動する。
もう酒がすすんで仕方がない、、、ウマイが止まらない!
腹の中で小躍りしている ♪

■ 蕎麦湯 ~ 濃厚なタイプを味わいたいなら日曜庵!

蕎麦湯

頃合いを見て、蕎麦湯が運ばれてきた。
白濁とした濃厚な色、まるで豆乳のようである。いや、甘酒かな?
木製の細長いスプーンが添えられている。いわゆるマドラーですな。
よ~く混ぜ混ぜしながら、そば猪口に注ぎ、先ずはそのままを飲む。
(猫舌ゆえに、、少し粗熱を冷してから)

見た目は豆乳や甘酒に見えるが、口にすると、蕎麦のポタージュか?と言いたくなるほど、とろ~りとして濃厚な味わい。つぶつぶ感もある。

つゆに薄めて飲むと、つゆの出汁とマリアージュして、別の飲み物になる。
蕎麦湯の御代わりをしている客もいた。

私は蕎麦湯と一緒に酒を飲むことがある。
蕎麦つゆに好みの加減で蕎麦湯と薬味をブレンドして、味を調整しつつ、酒と交互に飲む。

 

私の場合は、
濃厚なタイプの蕎麦湯 → 酒のつまみ
さらさらタイプの蕎麦湯 → 酒のチェイサー にしている。

蕎麦屋で酒を愉しむ飲むときは、ぜひ試してもらいたい。

■ まとめ

 

日曜庵では、直接、農家に赴き、厳選した玄蕎麦(殻がついたままの蕎麦の実)を仕入れ、専用の冷蔵倉庫で大切に3年間寝かせ、熟成させている。

 

3年間、寝かせる事で味が追熟され、穀物の甘みと旨味が増していく。
冬眠から目覚めた美味しい蕎麦、ぜひとも一度味わってほしい。

 

そして忘れてはならないのが、あの「絶品玉子焼き」である。
並んでも食べてほしい、あの味と美しさに感動してもらいたい!

さて、ここまで長らくお付き合いいただいた方...
あなたも「蕎麦好きの呑兵衛さん」ですね。

蕎麦を食べ歩いて、写真を撮り貯めていたところに
今回、ブログを書くという機会ができてたので、
満を持して「手打ち蕎麦」をテーマに日記を書くことにした。

蕎麦っこめぐり、第一弾は「日曜庵」を紹介しましたが、次回は私の好きな蕎麦屋系列の元祖である店を紹介しようと思う。

店舗情報

そば㐂り 日曜庵

東京都葛飾区柴又7-13-2
TEL 03-5668-0084
金・日・土・祝日が営業
11:00 ~(蕎麦なくなり次第営業終了)
アクセス:京成金町線 「柴又」 駅より徒歩約5分