変わり蕎麦といえば「一茶庵のけしきり蕎麦」人気の五色そばを食べてみた!
手打ち蕎麦といえば、「更科(さらしな)」系、「藪(やぶ)」系、「砂場(すなば)」系、「一茶庵(いっさあん)」系、この”4つ”が有名どころ。
今では、さらに派生して独自の蕎麦を考案している店舗が増えている。
今回、お話しするのは栃木県足利市に店を構える『一茶庵(いっさあん)本店』である。
蕎麦打ちの名士達の間で、(その名を知らぬ者はいない)と言われる、一茶庵の創始者「友蕎子(ゆうきょうし)片倉康夫氏」の店だ。
現在、片倉氏を支持して、足利の店で修業したお弟子さん達が巣立ち、彼の”蕎麦打ちの技術”と”志”を伝承しながら全国で活躍している。
片倉氏は、お弟子さん達にとって「お蕎麦の世界の千利休」のような人物だったに違いない。
このブログ”蕎麦っこめぐり”では、片倉氏の愛弟子である”高橋邦弘氏”が新たに開いた「翁(おきな)」系の名店を紹介していくことになるでしょう。
それゆえ、その元祖となる「一茶庵(いっさあん)本店」を先に語らずして、先へ進めないのである。
では今回、お目当ての人気メニュー変わり蕎麦「けしきり蕎麦」を堪能してみよう!
■ 店内の雰囲気 ~ 一茶庵の創始者、片倉康雄氏の記念室「友蕎亭」が見える!
一茶庵本店の店内は、天井が高くて、広々としており、席数もかなり多い。
店内のテーブル席からは、風情ある中庭を眺めることができる。
都内に店を構える蕎麦屋とは違い、敷地も広く、贅沢な造りになっている。
テーブル席に案内されたので見えなかったが、奥にはお座敷もある。
さすが本店だけあって、蕎麦屋というより、料亭を思わせる雰囲気である。
窓際から中庭を眺めると「友蕎亭(ゆうきょうていてい)」という看板を掲げた部屋(離れ座敷)が目に飛び込んできた。
この部屋は一茶庵の創始者、片倉康雄氏の記念室で、彼が愛用した道具や書籍が展示されており、予約すれば見学できるようである。
■ 蕎麦前 ~ この鴨スモークを食べずして帰れるものか!
〇 板わさ
まず、日本酒と一緒に出てきたのが「板わさ」、小田原産のかまぼこである。
シンプルにうまい。厚みもちょうどいい。
醤油をつけずにワサビだけで十分である。
〇 鴨スモーク
続いて、”合鴨肉のくんせい”が登場。
優しいピンク色で食欲をそそる。レタスのグリーンにレモンの黄色、色鮮やか!
手前の輪切りレモンが「早く搾れ!」と言わんばかりに主張している…ように見える。
1枚目は何もつけずにそのまま食べる。
燻製した合鴨肉はハムのように、”やわらかく”、旨い。
2枚目は味を変えて、レモンを搾った肉を食べてみる。
レモンの酸味で味が引き締まり、これもまた旨い!
さらに味を変え、板わさに添えられていたワサビもつけてみる。
もちろん旨い。
■ 日本酒 ~ 「赤城山」これは隣県の銘酒では?
蕎麦前と一緒に頼んだ酒は、
お隣り群馬県の日本酒「赤城山(あかぎさん)本醸造辛口 生貯蔵酒」である。
ラベルには赤字で「男の酒」と書いてある。
カッコいいではないか!
味は、”キリリ”と辛口で、のど越しがスッキリとしたドライなタイプ。
私の好きな味である。
女性的な優しさの合鴨肉のくんせいには…
「男の酒」がピッタリだ!
お通しで出された山菜とも相性抜群。
■ 手打ち蕎麦 ~ 変わり蕎麦といえば、一茶庵の「けしきり蕎麦」が有名!
〇 五色そば(数量限定)
”変わり蕎麦”を味わうなら、一茶庵の「五色そば」をぜひ試してほしい。
蕎麦が入っている器は、それぞれ5色に塗り分けられてあり、じつに趣きがある。
蓋を開ける前から期待が膨らみ、心が躍る♪
さあ、蕎麦たちのお顔を拝見しようじゃないか。
蓋を開けて並べてみると、豪華絢爛だ!!
蕎麦が5種類も並ぶと、目にも鮮やかで美しい。
【五色そばの中身】
- 左上(赤の器) → 「おせいろ」
- 右上(茶の器) → 「田舎そば」
- 右下(青の器) → 「けしきり」
- 中下(黒の器) → 「茶そば」
- 左下(黄の器) → 「さらしな」
「おせいろ」は、蕎麦粉8割に対して、小麦粉2割で打ち込んだ極細の二八そば。
表面にホシと呼ばれる(甘皮やそば殻の微粉)粒々はなかったが、蕎麦の風味はしっかり残っていた。
「田舎そば」は、蕎麦を殻つきのまま挽いて、蕎麦の色は少し黒め。おせいろより、少し色が濃い。中細でなめらか、食感は”モチモチ”していた。
「けしきり」は、さらしな粉に炒った”芥子の実”を打ち込んだ変わり蕎麦である。
蕎麦の表面に芥子の実の粒々があり、炒った香ばしさと蕎麦の甘みが感じられる。
さすが人気の変わり蕎麦!これが食べたかった。
「茶そば」は、さらしな粉に抹茶を打ち込んだ変わり蕎麦である。抹茶の緑色が鮮やかで目も楽しませてくれる。茶ばの香りが口から鼻に抜けて、上品で味わい深い。
「さらしな」は、5つの中で一番、真っ白な蕎麦である。粗挽き蕎麦が好きな私には、お上品な「さらしな」さんは物足りなかった。
5つのうち、”変わり蕎麦”は「けしきり」と「茶そば」で季節によっては「柚子切り」が登場する。
変わり蕎麦を考案した御本家は、
器にもこだわりがあり、目と舌の両方を愉しませてくれる。素晴らしい!
ちなみにメニューには、”三色そば”もある。
「けしきり」、「茶そば」、「田舎そば」が入っていて、変わり蕎麦は2つ楽しめる。
〇 天せいろ
天婦羅つきのせいろである。
五色そばの「おせいろ」と同じ極細の二八そばであるが、量が多く、食べ応えあり!
天婦羅は”海老2尾”と”茄子”、”人参”、”カボチャ”、”ピーマン”が盛られていた。
味は普通においしいが、私は衣が薄く、からりと揚がっている方が好みだ。
蕎麦つゆは、甘辛く、かつお出汁が効いた濃いめな感じだった。
1口目は、箸でたぐって、そのまま食べる。
2口目は、お塩をもらって、蕎麦に振りかけて食べる。
3口目は、蕎麦つゆにつけて、”ズズズッーっ”とすする。
この後は薬味を加えて、酒を飲みながら蕎麦をいただく。
毎回、この食べ方をする。
■ 蕎麦湯 ~ さらさら系の蕎麦湯はお酒のチェイサーに!
一茶庵本店の蕎麦湯は、少し白濁していて、”さらさら”した感じである。
少しトロミがかっていたが、お酒のチェイサーとしていただいた。
■ まとめ
私がはじめて一茶庵の手打ち蕎麦を食べた店は、同じ系列の「鎌倉一茶庵」である。
当時は鎌倉の鶴岡八幡宮の目の前に店を構えていた。残念ながら現在は閉店している。
今でも、鎌倉一茶庵で食べた「きのこの鴨せいろ」の味が忘れられない。
厚みのある鴨肉はとても柔らかく、たくさんの茸が入った鴨汁の味は格別の味だった。
せいろとの相性もよく、蕎麦をいただいた後の鴨汁は蕎麦湯を注ぎ足し、全部飲み干してしまうほど、素晴らしい蕎麦であった。
私が蕎麦を好きになったのは、鎌倉一茶庵の蕎麦を食べた後からだと思っている。
そして今では、一茶庵の流れを組む「翁」系の蕎麦屋をめぐるのを目下の楽しみとしている。
そんな自分が好きになった蕎麦の元祖である「一茶庵本店」には、必ず来てみたいと思っていた。
本家本元は店構えも格式があり、まるで料亭のようなお蕎麦屋だった。
次回、”蕎麦っこめぐり”第三弾は、一茶庵の創始者、片倉康夫氏の下で直接、修業をした愛弟子さんの店を紹介しようと思う。
店舗情報
栃木県足利市柳原町862-11
TEL 0284-40-3188
営業時間:午前11時30分~午後2時(売れ切れ次第終了)
定休日:毎週水曜日(月一回 火・水または水・木連休の週あり)
※他に催事などで臨時休業あり